虫歯のできかた②

 前回に引き続き、虫歯の進行についてお話しします。

 

 スウェーデンの調査では、歯の表面(エナメル質)に最初の虫歯が見つかってから象牙質に進行するまでに8年かかる人が多かったそうで、そこから象牙質と神経の間までに進むのに平均して3~4年かかると報告されています。しかし、これは大人数を調査して算出した平均であって、虫歯の進行が一番早かった症例ではもっと短い期間で神経近くまで虫歯が進んでいます。最初にお話しした虫歯に関わる因子のせいですね。歯の強さや唾液の性質、間食の頻度や虫歯菌の多さ・・・これらが相互に影響し合って虫歯が出来るので、誰一人として同じ進行速度ではないからです。

 

 日本の調査では、6か月毎に学童のお口の中を検査した報告が上がっています。エナメル質に限局した白斑や、咬み合わせの面の着色などは2年たっても虫歯の進行はあまりなかったのですが、スティッキーフィッシャーと呼ばれるような、歯科用器具で触ったときに感じる引っかかりがある早期の虫歯だと、1年後に60%が、2年後には70%強が認識可能な虫歯になっていました。もともと認識可能な虫歯の場合は、進行速度はさらに加速しています。重度な虫歯になるまでにかかる時間は半年もかかりません。

 

 これらを踏まえて、普段から糖分の多い食生活を続けていた人がどのくらいで虫歯になるかを考えると、いつなってもおかしくないという結論になります。歯科医院を受診した時点で、虫歯菌がどれくらい多かったのかは検査をしない限り分からないので、患者さんの普段の食生活やハミガキの頻度、熟練度を知ることは歯医者さんにとって重要です。

 

目に見えて分かる虫歯は、象牙質という部分まで虫歯が進んで穴が開いたり黒くなったりしている状態ですが、歯の表面だけを溶かそうと思えば炭酸飲料につけて30分も待てば十分です。レントゲンでも判断の難しい小さな虫歯もありますから、まずは毎日のハミガキが大事ですよ。

 

参考文献:

島田義弘 学童永久歯における各種齲蝕性病変の進行速度と齲蝕検出基準についての研究 口腔衛生学会雑誌 1968年18巻1号 p.15-25

谷島 茜 他 酸とpHの種類および浸漬時間によるエナメル質の高度への影響

口腔衛生会誌 2015年65巻 p.2-9

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