2026/09/13
前回、矯正治療はダイエットと同じくリバウンドがあるとお話ししましたが、ケースごとに後戻りのしやすさが違います。今回は、上顎前突(いわゆる出っ歯)について見ていきましょう。
【上顎前突の後戻りしやすいケース】
① 骨格性上顎前突(Skeletal Class II)
- 上顎が前方位にある
- 下顎が後方位(後退位)にある、もしくは下顎が小さい
- 上顎と下顎の前後的な差が大きい → 骨格的な不正が強いほど、歯だけで補正した場合は後戻りしやすい。
特に
- 上顎前歯を大きく後方移動したケース
- 下顎の成長が少ない患者 は後戻りリスクが高い。
② 口唇閉鎖力が弱い(Lip incompetence)
上顎前突患者に非常に多い。
- 上唇が短い
- 口唇閉鎖時にオトガイ部に緊張がでる
- 安静時に口が開いている
→ 前歯を後方に下げても、口唇圧が弱いと前方へ押し戻される。
③ 舌突出癖・低位舌(Tongue thrust / Low tongue posture)
- 嚥下時に舌が前歯を押す
- 安静時に舌が低位で、上顎前歯を支えられない
- 口呼吸で舌が常に下がる
→ 舌圧は口唇圧より強いため、前歯が再び前方へ傾斜しやすい。
④ 口呼吸(Mouth breathing)
- 口唇閉鎖ができない
- 舌が低位になる
- 上顎前歯が乾燥し、歯肉炎で支持組織が弱くなる
→ 上顎前突の後戻りリスクが最も高い習癖のひとつ。
⑤ 抜歯スペースの閉鎖が不十分
- スペースが微妙に残る
- 歯根の平行性が不十分
→ 前歯が再び前方へ傾斜しやすい。
⑥ 大きく前歯を後方移動したケース(大きな歯軸変化)
- 上顎前歯の傾きを大きく変えた
- 歯根周囲の組織のリモデリングが不十分
- 歯根が皮質骨に近い
→ 生体が“元の傾斜角”に戻そうとする力が強い。
⑦ 成長期の治療で、下顎の成長が少なかったケース
- 思春期成長が弱い
- 下顎が前方に成長しない
- 上顎前突の骨格的背景が残る
→ 歯列で補正しただけなので、成長に伴い後戻りしやすい。
⑧ 保定装置の使用が不十分
- 保定装置の使用が不安定
- リテーナーが合わなくなっても放置
- 固定式保定を早期に除去
→ 上顎前突は特に“保定の質”が結果を左右する。
上顎前突は“前に出やすい性質”を持っているため、 治療後も前に戻ろうとする力が強いタイプです。 だからこそ、保定と習癖改善がとても重要です。
矯正治療についてのQ&A(日本矯正歯科学会)
